前回以前の記事にあるように、青春18きっぷを利用して旅行していたのですが、幸か不幸か、1回分だけ余らせてしまいました。

任意の5日は電車に乗り放題の青春18きっぷ、私のような金無し旅行者にはとても助かるのですが、便利な反面、ややこしいルールやデメリットもあります。

この時の私が突き当たっていた問題、青春18きっぷの利用期間です。

各季に発売される青春18きっぷには、中高生や大学生の休暇シーズンと重なるように1ヶ月程度の利用期間が設定されており、その期間を過ぎるとこの切符は使えなくなってしまいます。
例えば私が今回購入した夏の青春18きっぷの場合、7月20日~9月10日の間に使い切らないと、残った切符はただの紙キレになってしまいます。

切符の使用期限は迫っていましたが、もう十分元は取れましたし、長旅の疲れが抜けないし、1枚じゃそう遠くへも行けないし……と後ろ向きな考えばかりが浮かんできます。
しかし根が貧乏性なため、最終的には日帰り旅行を、それも切符をフル活用してなるべく遠くへ行くことに決めました。

そういうわけで、残り1枚の切符を使って、富山まで向かいます。

無職の朝は早い。
今回の場合、特にタイム・スケジュールがタイトですので、時間を有効に使うためにも始発に乗って出発しました。

・富山駅に到着
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富山に来たのはいいのですが、如何せん急に決めたものですから、予定も計画もなにもありません。
駅のインフォメーション・センターで地図を頂き(朝早くから本当にお疲れ様です)、観光スポットをチェックします。
5分程検討し、

 富山城
 お寿司屋さん
 富山県立近代美術館
 富山市科学博物館
 環水公園
 夕食(お酒つき)

今日中にこれだけは周ろうと決めました。

決めたのはいいのですが、富山の街って結構広いんです。例えば駅から富山城まで歩くと10分程度、そこから美術館・博物館へ行こうとすると、さらにたっぷり10分程度を要します。
この時は9月上旬、まだ残暑が厳しい時期で、徒歩で行動するのは体力的に不利ですし、なにより時間をロスしてしまいます。

富山地方鉄道(地元の方は「地鉄」と呼ぶそうです。かわいいです。)が運営する路面電車や路線バスがあるのですが、気が小さいので運行ペースや路線図をシッカリ把握しないと怖くて乗れません……。

そこで、サイクリストらしく、自転車を借りることにしました。

富山市には、クロシティとやまという先進的なレンタルサイクルサービスがあります。

シクロシティは、まず初めに利用者カードを借り、カードを使って市内の自転車置き場(ステーション)で自転車をレンタル、そして目的地近くのステーションまで移動した後、そこへ返却するというシステム。

ステーションを出発してから30分は何度でも無料なので、レンタルから30分以内に返却すれば、僅かな使用料で好きなだけ自転車を利用することができます。
(1日パスの場合、利用者カードを借りる時に基本料金300円+デポジット700円を支払う必要があります。デポジットについては、カード返却時に戻ってきます。)

駅前にあるCiCというビル(地図)の1階窓口でカードを借ります。

・ガラス張りのエクステリアと、赤い看板が目印です
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住所氏名年齢等を用紙へ記入、お金を預けてカードを受け取りました。

・利用者カード
PASMOやTOICAと同じようなICカードです。DSC02543

・CiC目の前のステーション。スマートです。
こういったステーションが、市内の主だった場所に計18ヶ所あります。
観光目的なら、レンタルサイクルを利用してポイントツーポイントで移動することが可能です。
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・カードセンサー
ココにピッとするだけで、自転車を使用することができます。
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・自転車
乗り心地はまあまあですが、やや野暮ったいデザインです。
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サドルがクイックレバー式なんですね。
ユーザーへの配慮は素晴らしいです。
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※私が利用した時と現在とでは、設備やシステムが大きく異なるようです。ご容赦ください。


自転車を利用したら、あっという間に富山城に着きました。
ちなみに、富山城周囲には2ヶ所か3ヶ所ステーションがあります。大変助かります。


・富山城外観
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この建物、通称「富山城」と呼ばれていますが、本来あった富山城とは異なる建物です。
元の富山城天守は、中世に建造され、江戸時代は富山藩主の居城となり、維新後~昭和に至るまで富山県の県庁舎として利用されていましたが、1930年(昭和5年)に起きた火災で焼失していました。
現在ある本丸風の建物は、戦後になってから、かっての天守を模して建てられたもので、建設時から郷土博物館として使用されているそうです。
どうもこの頃は「お城風の建物(尾道城、村上水軍城も"お城風")」に縁がある時期でした。

かっての城址は、公園として解放されています。真っ白な敷石や、青々とした芝生が広がっていて、大変気分がいいです。

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富山市郷土博物館の中には、古代に始まり、富山城が成立した中世戦国時代、そして江戸期の富山藩の歴史に関する資料が展示されています。
前史の地層の断面図や、安土桃山時代に富山を拠点とした武将・佐々成政が各所へ送った書簡、富山城下町の模型や絵図など、大変面白い展示でしたが、ちょっと照明が暗かったですね……。

・雰囲気はありますが、見にくいです……
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富山城址公園の敷地内には、郷土博物館の他に、佐藤記念美術館も併設されています。
この美術館、地元富山の中堅ゼネコン・佐藤工業の創業者である佐藤助九郎のコレクションを中心に作られたものです。

助九郎は実業家でありながら高名な茶人でもあり、本人が用いた茶室なども、この美術館内に移築されています。

この時期は、生き物・花を扱った企画展が開かれていました。
虎の手のミイラ(江戸時代の日本画家が、実物をモデルとするため中国に取り寄せたものの実物)とかも飾られていて驚きます。
日本美術が好きな方には是非訪れてほしい美術館です。


旅行へ来たら、お昼はお寿司と決めています。
しかしたまたまお寿司屋さんの休日と重なってしまったのか、お店を探すのにやや苦戦しました。
そして、富山駅から少し南に下ったところに「寿司正」を発見。
ランチの握りとビールを頂きました。蘇ります。

ちなみに、富山ではお寿司屋さん達が集まって「富山湾鮨」という企画を行っています。
地のネタ、地の米を使った10貫セットで、価格もわりとリーズナブル(決して安くはないです)。
この日は知らずに行ってしまいましたが、次回は「富山湾鮨」を予約してみたいです。


昼食を済ませたら、次は富山県立近代美術館富山市科学博物館へ。
美術館と博物館は、富山城址公園からさらに南へ10分程下った先、城南公園の敷地内にあります。
残念なことに、城南公園の近辺には、シクロシティのステーションがありません。
寿司正で、隣席のオジサンから「バスを使えばすぐだよ」と教えて頂いたのですが、バスは怖いので乗れません。
致し方なく、国道41号沿いを歩いて行きました。

・この道路が富山から岐阜を貫き名古屋までつながっていると思うと、なんだか感慨深いものがあります
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・いかつい感じのデイサービス・センター
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・富山県立近代美術館(The Museum of Modern Art, Toyama)
MOMATと呼べとでも言うのでしょうか。大変立派な建物です。
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貧乏性なので隅々まですべて回りましたが、常設展である「20世紀美術の流れ」と「オリンピック・万博ポスター」の展示が、特に面白く見られました。

「20世紀美術の流れ」について、美術にはまったく詳しくないのであまり言うとアレですが、近代の写実主義から印象派を経てキュビズム・フォービズム・ダダイズムなどへ、そして現代のコンセプチュアル・アートなどに至るまでの流れが(流れと言っていいのか分かりませんが)、著名な芸術家の代表作品・有名作品を用いて示されています。
難しいことは全然分かりませんが、ロートレックやゴッホ、ピカソやダリ、岡本太郎などの作品も展示されていて、ミーハーな私は十分満足出来ました。

ポスターの展示は、昭和・レトロなモノ好きにはたまらない展示です。東京オリンピックや大阪万博が開かれた60年~70年台デザインのスマートさ・カッコよさがよく分かります。

この美術館、館内にガイドさんが何名も常駐していて、展示作品の解説をして下さいます。
皆様大変に博識で勉強になったのですが、私はボケーッと絵を眺めたいもので、率直に申し上げますと嬉しさ半分迷惑半分といったところでした。すみません。


・富山市科学博物館
こちらも大変立派な建物です。
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科学博物館内では、1階では富山県の地理地層がどう形成されたか、2階では現代の富山県の自然の様子が、3階では一気に飛躍して宇宙についての資料が展示されています。

体験コーナーも充実していて、小規模な科学実験もあれば、ダイヤモンドダストを生成する部屋、錯覚を体験する部屋などもあります。ダイヤモンドダストと錯覚の部屋は超オススメです。

・錯覚の部屋の天井
部屋の中で10分横になって、立ち上がってみると……?
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また、約40分のプラネタリウムもあります。この時は私一人のために上映して頂き、大変恐縮な思いでした。とってもキレイでした。

上野の科博もそうですが、身体を動かせる展示はやっぱいいですね!
ただ如何せん周囲は親子連ればかり、しかも展示も子供向けなもんですから、多少の気恥ずかしさはありました。
将来万が一子供ができることがあれば、その時は堂々とはしゃごうと思います。


科博で一人騒いでいたら、日が傾いてきてしまいました。
終電の時間が刻一刻と近づいてきます。
夕食までは富山で摂ると決めていたので、急いで行動しなければなりません。

再び国道41号線を北へ、城址公園の近くのステーションで自転車をレンタルし、環水公園へ向かいました。

富山県富岩運河環水公園は、富山駅から北に7~8分程歩いた場所にあります。
公園の周囲にはシクロシティのステーションが2ヶ所あるので、レンタサイクルを使えばあっという間です。

・旧運河を利用した公園らしいです
柔らかな色のレンガと夕日を受けた湖がとてもキレイです
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・お寿司屋さんで会ったオジサンが「環水公園のスターバックスは、日本一売上がいい!」などというバカげたタワゴトを申しておりました
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調べてみると、環水公園のスタバは「世界一綺麗なスターバックス」と言われているそうで、あながち間違ってはいないですね。すみません。
デッキからは湖と公園、水門の遺構が一望できて、景観はメチャクチャいいですよ。
あとはスタバじゃなくてコメダだったら最高なんですけどね……。


・牛島閘門(こうもん)
旧運河で用いられていた、高さが異なる2つの流れを、水量を調節することによってつなぐための設備です。
こういう遺構はステキですね。こうもん。
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・いい画が撮れました
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死にたくなりました。


日が暮れかけた頃、富山駅前のCiCインフォメーションへ利用者カードを返却、デポジット700円を受け取ります。
300円で自転車1日乗り放題でした!

その後、駅前の通りを少し入ったところにある居酒屋「さんじゅうまる」へ入りました。
刺身をいろいろ頼みましたが、中でもカワハギの肝を醤油に溶いて、そこに刺身をつけて食べるのが最高に美味です。
魚も地酒も大変美味しくて、つい頼みすぎてしまいますね……。

カウンターで隣り合わせた老夫婦から「どこから来たの?」と尋ねられ、そこからあれこれ話しているうちに「一緒に2軒目行かないか?」とのオファーが。
一度は「終電があるので……」と辞退しましたが、「ウチに泊まればいいよ」とのことだったので、お言葉に甘えてお世話になることにしました。

ご主人はギターを嗜まれるそうで、2軒目は行きつけのライブバーへ。
ご主人のお知り合いのバンド演奏を聴きながら、お酒を頂戴しました。

その後、地鉄に乗ってご夫婦のご自宅へ。
リビングでご主人のギターを聴かせて頂いたり、アルバムを見せて頂いたり、軽くお酒を飲んだりした後、お風呂を借り、パジャマを借り、個室に布団も借り、至れり尽くせりです。
「なんでこんなことになっているんだろう……」そう思いつつもぐっすり熟睡しました。

翌朝は、奥様手作りの朝食を頂きました。
ご飯に味噌汁、干物におひたしに煮物、卵、納豆、海苔と、旅館の朝食かと見紛うほどの豪華さ。
働いていた時は朝食を食べる余裕が無かったし、マトモな朝食を食べたのなんて久しぶりかもしれません。

ご夫婦に見送られ、再び地鉄に乗って富山駅へ。

・地鉄が、シブすぎる
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そしてJRでおウチに帰ります。
青春18きっぷはもう残っていないので、渋々ながら通常の運賃を支払いました。


ノープランの旅行でしたが、思いがけない幸運な出来事もあって、非常に思い出に残るナイスな旅になりました。
今度はもっと計画的に、時間の余裕を持って行きたいですね。

<おわり>