第4の島、大三島
午前10時、尾道を出発してから3時間が経過していました。この時の季節は8月の終わり頃、日差しも徐々に厳しくなってきました。
生口島を出て多々羅大橋を渡ります。もう息は絶え絶えです。

・多々羅橋。全長1480m、また斜張橋です。
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橋を渡ると大三島、ここから愛媛県今治市に入ります。

この島、もとは上浦町と大三島町という自治体だったのですが、平成の大合併でまとめて今治市へ吸収されました。

「大三島」という地名は、三島神社の総本山、大山祇(おおやまづみ)神社に由来しています。
大きな島が3つあるから大三島ではありません。
古くから「神の島」と呼ばれ、そのために瀬戸内にありながら漁業が盛んではない(禁忌とされていたそうです)変わった島です。

大三島のサイクリングコースは、まず橋を下りてから北西方向へ進み、島の北端から南西方向へ下り、その後島の中央を東方向へ横切り、東側の海岸沿いを南下して、伯方島へ続く大三島橋へ至る、というのが正しいルートだそう。

ちなみに、しまなみ海道推奨ルートでは自転車用の青線が引いてありますが、それ以外の場所には無いのでご注意を。

全長は約29kmで、山中を進む場所もあるため高低差もあります。
地図を見ると、なかなか面白そうな道程です。

ただ、この時の私の頭の中は「早く今治に着きたい、休みたい」の一心のみでした。
というわけで、多々羅大橋を下りてすぐ南下、一目散に大三島橋を目指します。

途中の海岸で、村上水軍の砦跡(こっちは本物)と遭遇。

・昔は立派だったようだが……
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・今はただの島のよう……
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地元の人の話では、和田竜「村上海賊の娘」が本屋大賞を受賞したのをきっかけに、この地域を売りだそうと、島への上陸ツアーなんかも検討してるそうです。

遠くから見るとただの茂みですが、近くに行くとしっかり城壁の跡とかあるとか。
是非行ってみたいですね。

ちなみに、和田竜氏は『のぼうの城』を書いた人です。『村上海賊の娘』も、そのうち映画化されるかもしれません。

・漁港もありました。壁画のセンスが絶妙。
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多々羅大橋からわずか5km程南に行くと、もう大三島橋に着きます。
あれ、おかしいな? もう30分も経ってますよ?

大三島橋は、今まで通った橋よりも随分前に作られたそう。
本四連絡橋の中では最も古く、さっき通った多々羅大橋より20年も先輩です(大三島橋は1979年開通、多々羅大橋は1999年開通)。

本四連絡橋はほとんどが吊橋か斜張橋なのですが、この大三島橋だけがアーチ橋です。
一見仲間外れみたいですが、本四連絡橋の塗装はすべてこの大三島橋の塗装色(ライトグレー)を基調にされています。
いわばモデルとなった先達なんですね。

・アーチ橋です
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・中央鉄柵をはさんで向かって左側が自動車道、右側が歩道/自転車道。広い!
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第5の島、伯方島
あっという間に大三島を抜け、次は伯方島。
伯方島のサイクリングコースは、橋を下りてから島を反時計回りに1周、そして伯方・大島大橋へ向かうというものですが……地図を見ると、途中に峠道とかあります……マヂ無理。。。

というわけで、さっさと橋へ向かいます。距離としては5kmくらいです。

途中の道で、また造船所を発見しました。
「しまなみ造船」という会社のドックで、今まさに船を組んでいるところです。
このあたりは緩く長い登り坂が続いていて、メチャクチャつらかった……そして後ろから来た子供ライダーに抜き去られるという屈辱……。

・しまなみ造船
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・伯方・大島大橋。シンプルな吊り橋ですね。
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・構造図を見ると、ワクワクします。
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伯方・大島大橋も、橋の右側がすべて歩行者/自転車用通路になっています。幅員は3m弱あり、走行にも余裕がありました。ただ、あんまり飛ばすのはやめましょうね。

あとは大島を残すのみ……しかし限界も近い……。

第6の島、大島
伯方・大島大橋を渡ると、いよいよ最後の島、大島へたどり着きます。
この島は、北端の伯方・大島大橋を下りた後で、南端の来島海峡大橋まで走らなければいけなりません。まるでラスボスのような島。

・橋を下りたところです

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さて、時間は11時過ぎ、そろそろお腹が空いてくる時間になってきます。
大島に来たら、是非とも行ってみたい店がありました。

民宿お食事処 魚芳

漫画家のさくらももこがしまなみ海道へサイクリングに来た時に立ち寄ったお店で、『さくらえび』というエッセイにも登場する食堂です。
瀬戸内で取れたウニ丼が有名。写真を見てるだけでもう……。
うに丼

※写真は食べログから引用しました

場所は調べてあるので、さっそく行きましょう!
食べ物がからむと俄然テンション上がってきますね。

そして意気揚々とお店を尋たのですが、鍵が閉まってるし、電気も点いてない……。
嫌な汗をかきながら、お店に電話をかけてみると……

「すみません、今日ランチやってないんですよ……」

えええ……そんな……それじゃあ私はこれからなにを頼りに今治まで走れば……。
落ち込んでいる暇はない、とにかくあのウニ丼が食べたい。
ウニ丼を食べるためなら、ランチを諦めてディナーを待つことさえ辞さない。
そんな覚悟で電話を続けます。しかし……

「すみません、休み中は夜も予約がいっぱいでして……」

えええ……えええええ……。
そうですか……意気消沈して電話を切り、途方に暮れました。

頭はすっかり昼食モードで、疲労感と空腹感に打ちのめされます……。
しまなみ海道の終わりまではあと25kmほど、頑張って走れば1時間と少しで着く距離ですが、今の私にはもうそんな気力も体力も残っていません……半泣きになってしまいます。

とは言えジッとしているわけにもいかず、こうなったらなにがなんでもウニが食べたい。
「海は近いし、ウニぐらいどこでも獲れるだろ!」ってことで、別の店を検索。

検討に検討を重ね、「よしうみいきいき館」へ行くことに。

「いきいき館」は大島南端、来島海峡大橋のすぐふもとにあります。現在地から……約10km!
「疲労と空腹は最高のスパイスだ!」
自分にそう言い聞かせ、ラストスパートをかけます。

大島内のサイクリングコースは、島の中央を縦断するように通っています。
途中で海岸沿いに回るルートが正規のコースなのですが、遠回りになりそうだったので自己判断でルート修正して内陸部を通ることに。
そしたら、また長い長い坂ですよ。本当に私の判断はアテになりませんね。
小さいギアで、キコキコキコとひたすら漕ぎ進めていきます。スピードは出ない、身体が前に進まないのに、疲労は順調に溜まっていく……また子供に抜かれる……つらい……。

休憩をはさみつつおよそ2時間弱、ようやく「いきいき館」に到着しました。
さすが「サイクリストの聖地」なだけあって、駐車場には自転車がいっぱいです。

・スタンドも完備されていいました!DSCF2162

・来島海峡大橋はもう目の前です。
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・店内の生け簀には、魚が元気に泳いでいます。
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これは期待が高まります!
そして……

・念願のウニ、そしてイクラ
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ご飯の上に艶めくウニとイクラ、一口頬張るだけで、豊潤な旨味が口いっぱいに広がって……筆舌に尽くしがたいです……これを食べられただけで、汗水たらしてここまで来たかいがあったと言ってもいいのではないか。
ちなみに、いきいき館では採れたての海の幸を七輪で炙る海鮮BBQもできるのですが、「2名以上様からお受けいたします」とのこと……私はお一人様なので断念しました。
瀬戸内で採れた甘夏ソフトを食べて過熱気味の身体を覚まし、休憩は十分。

・あまなつソフト
ソフトクリーム

ゴールの今治へ向けて出発します。

・来島大橋橋脚。でかいかっこE。
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・地上から橋までの高さは大体100m、こんな感じで頂上まで登ります。
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そして……。

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途中自転車のパーツが壊れるハプニングが。ご当地ホームセンター「ダイキ」にて緊急修理。

そして……。

着きました今治駅。写真の端っこ、路肩の青線が途切れてるの分かりますか?

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ゴール

長い旅路は、ここで唐突に終わりを告げました(感涙)

そして今治へ
なんだかんだで、今治駅近くの宿に着いたのは16時過ぎ。結局たっぷり10時間かかりました。

今日泊まるのは、米長旅館。海沿いにある趣きのある旅館です。
サイクリストの聖地・しまなみ海道にある宿なだけあって、自転車を施錠された宿の中に置かせてもらえます。
夜間の盗難はすごく不安なので、自転車を安全な場所に置かせて貰えるのはすごくありがたいです。

・宿の前には当然のように自転車スタンドが!
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受付を済ませ、昨日今日とで汚れた衣類を洗濯をしながら一休み。もう寝ちゃいそうです……。
洗濯物を干してる間に、夕食へ出ます。女将さんから近所の店をいくつか教えてもらいました。
なんでも、今治は焼き鳥が有名だそう。
というわけで今晩の夕食は焼き鳥に決まり!

何軒かお店を下見して、最終的に「世渡」へ入ることに。

Google+での評判
食べログでの評判

むっ、いろいろ書かれています……こういう店いいですね!
暖簾をくぐると、生憎と満席のようで、入口付近の椅子に座って順番を待ちます。
15分ほど待ったところで、カウンターに通してもらいました。

大将「皮焼きでいいよね!?」

席についた途端、威勢のいい声が飛んできます。ええ……まだ飲み物も決めてない、メニューも見てないんですが……ただこれだけ自信満々に勧めてくるってことは、美味しいんでしょうねきっと……。

「ウチははじめは皮焼きって決まってるから!他のものは作らねえから!」

しきりにこんなことを仰ってました。こだわりを感じます。
とりあえずビール、それに串焼きをいくつか頼んで、料理が来るのを待ちました。

今治の焼き鳥屋さん、炭火ではなく鉄板で焼くのが特徴です。
大将イチオシの皮焼きは、熱い鉄板の上に鶏皮を敷いて、上から重しで押さえつけ、そうしてじっくり焼いた後、特製のタレをかけてできあがり。
タレは醤油や味醂、それに砂糖とかでしょうか、わりと甘めの味付け。

初めて食べたけど、すごく美味しいです! ビールにもよく合います。
強烈に勧めてくるのも理解できました。

皮も美味いけど、タレがまた美味いんです。
皮焼きを一皿頼むごとに、千切ったキャベツが小鉢一鉢分ついてくるんですが、このキャベツをタレにつけて食べるとまた絶品です。

串焼きも全部鉄板で焼くようです。
鉄板で焼くことで、素早く熱が通り旨味が凝縮されるとか。
炭火焼鳥と比べると、たしかに肉に汁気があって、風味を豊かに感じました。

センザンキという鶏の唐揚げも、今治の名物です。
カラッと揚がった鶏肉にはしっかりと下味がついていて、濃い目で深みのある味わい。
ちなみに、センザンキのルーツは300年以上も昔へ遡るらしい。今治の伝統料理ですね。

女性の従業員さん「どこから来たの?」
私「岐阜からです」
従業員さん「大将、岐阜からですって!遠いところから来たわねえ!」
大将「自転車か? また頑張ったなあ、たくさん食ってさっさと寝ろ!」

料理も美味いし店の雰囲気も結構気に入って、ついつい長居してしまう。

大将「のんびり飲んでんなあ?」
私「美味しいから、ちゃんと味わって食べようと思って」
大将「こんなもんを美味しいと思ってるようじゃダメ、ダメだよ! 家の飯のほうが美味いよ! 俺は家の飯が食いたいよ!」

大将「まだ飲むのか?疲れてんだろ早く寝ろよ!」
私「もう少し焼き鳥食べたいなあ」
大将「俺今日帰ってみたいドラマあるんだよ! それまでには帰らねえといけねえんだよ! 早く帰れ!」

大将「皮、もう少し食うか?」
私「いただきます、やっぱり名物だけあって美味しいですね」
大将「名物でもなんでもねえよ! 俺、料理っていうとこれ(皮焼き)しかマトモに作れねえんだよ!」

「写真禁止」の張り紙を発見したため、食事とお話に集中してました。
しかし、食べログには写真がいっぱい載っていて、私もコッソリ撮っておけばよかったと少し後悔……。
まあ、思い出をあえて心の中だけに残しておくのも、いいですよね。
お酒も料理も美味しかったけど、大将のキャラでお腹いっぱいになりそうでした。

ちなみに、口コミ通りやっぱり合わない人は合わなさそうで、1杯だけ飲んでそそくさと会計するお客さんもチラホラ……店に行くときはそれなりに心の準備をしていったほうがいいかもしれません。

郷に入っては郷に従えで、大人しく諦めて大将が勧めてくれるものを楽しんで食べましょう。
オススメしてくれるのは美味しい料理ばかりで、ハズレはないですよ。

たっぷりのんびり飲み食いした後、大将と従業員さんから「明日もがんばれよ!」と激励されながら退店しました。
今度今治へ行ったら、また行きたいですね。

宿に戻ると、酔いと疲れも手伝ってすぐに就寝しました。
ちなみに米長旅館は昭和映画に出てきそうな激シブ宿泊施設でしたが、堪能するまもなく爆睡……。

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明日はしまなみ海道復路、そして尾道観光です。

<続く>